「SAPコンサルを辞めたい」
SAPコンサルとして働いていると、一度はそう思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
私はこれまでSAP S/4HANAの導入やバージョンアップ案件などに携わってきました。
SAPコンサルは年収が比較的高く、専門性も身につきやすい仕事です。一方で、実際に何年もSAP案件を経験していると、
- また大規模プロジェクトに入るのか……
- 数年おきに本番稼働を経験するのがしんどい
- SAPばかりやっていて、この先のキャリアは大丈夫なのか
- 製品側の問題なのに、なぜこちらが責められるんだろう
と感じることがあります。
私自身、SAPコンサルという仕事そのものを否定するつもりはありません。
むしろ専門性が高く、経験を積めば市場価値も上げやすい仕事だと思っています。
ただ、それでも「この働き方をこの先10年、20年続けられるだろうか」と考える瞬間はあります。
この記事では、実際にSAP案件を経験してきた私が感じる「SAPコンサルを辞めたいと思う理由」を7つ紹介します。
後半では、SAPコンサルを辞めたいと感じたときの転職先についても解説します。
SAPコンサルをやめたいと思う理由7選
1. 大規模プロジェクトになりやすく、長期間拘束される
SAPは企業の会計・販売・購買・生産など、基幹業務を支えるシステムです。
そのためSAP導入プロジェクトは、どうしても規模が大きくなりやすいです。
数十人程度のプロジェクトではなく、場合によっては数百人規模になることもあります。
そしてプロジェクト期間も長くなりがちです。
要件定義から設計、開発、テスト、移行、本番稼働まで関われば、数年間同じプロジェクトに所属することも珍しくありません。
大規模プロジェクトだからこそ経験できることも多いですが、一方で、
「あと何年このプロジェクトにいるんだろう」
と感じることもあります。
特に20代〜30代前半は、さまざまなプロジェクトや技術を経験したい時期でもあります。
その中で数年間ひとつのSAPプロジェクトに固定されることに、キャリア上の不安を感じる人もいるでしょう。
2. 数年おきに炎上プロジェクトを経験するリスクがある
SAPに限った話ではありませんが、大規模システム開発ではプロジェクトが炎上することがあります。
ただSAPの場合、プロジェクトそのものが大規模になりやすいため、炎上したときのインパクトも大きくなります。
例えば、
- テストで大量の不具合が発生する
- 要件変更が続く
- 移行作業が間に合わない
- 性能問題が発生する
- 本番稼働直前になって重大な問題が見つかる
といった状況です。
こうなると残業が増えたり、休日対応が発生したり、プロジェクト全体の雰囲気が悪くなったりします。
もちろん、すべてのSAPプロジェクトが炎上するわけではありません。
しかしSAPコンサルを長く続けていれば、数年おきに大規模プロジェクトへ参加することになります。
そのたびに、
「次の案件は無事に終わるだろうか」
というリスクを抱えることになります。
私自身、この「数年おきにまた大きな山場が来る」という働き方は、SAPコンサルを辞めたいと思う理由のひとつです。
3. 本番稼働のたびに強いプレッシャーがかかる
SAPプロジェクトでもっとも緊張する瞬間のひとつが、本番稼働です。
SAPは企業の基幹システムなので、何か問題が起きれば業務そのものが止まる可能性があります。
販売ができない。
請求ができない。
会計処理ができない。
物流が止まる。
こうした事態につながる可能性があるため、本番稼働時の緊張感はかなり大きいです。
リリース後に問題が発生すれば、原因調査や影響確認、暫定対応、本対応などを短時間で求められることもあります。
数年間かけてシステムを作り、最後に本番稼働という大きなイベントを迎える。
そして数年後には、また次の導入やバージョンアップで同じ緊張感を経験する。
SAPコンサルを長く続けるということは、この本番稼働を何度も経験するということでもあります。
私はここに、SAPコンサルを続ける難しさを感じています。
4. SAP製品のバグやサポート対応に振り回される
個人的にかなりつらいと感じるのが、この問題です。
SAPはパッケージ製品なので、プロジェクト側で作ったプログラムだけではなく、SAP標準機能そのものに問題が発生することがあります。
特にバージョンアップでは、
- SAP標準機能の挙動が変わる
- 性能が以前より悪化する
- 想定していた結果にならない
- 特定条件で不具合が発生する
といった問題に遭遇することがあります。
当然、SAP標準の不具合であればプロジェクト側だけでは根本的に修正できません。
SAPへの問い合わせやSAP Noteなどを確認しながら対応することになります。
しかし、実際のプロジェクトでは、
「SAP標準の問題なので仕方ありません」
だけでは済みません。
ユーザーから見ればシステムに問題が起きていることに変わりはないため、プロジェクト側が説明を求められます。
こちらの設計や開発に問題がないにもかかわらず、クライアントから厳しく状況を確認されることもあります。
また、私自身の経験では、メーカーサポートとのやり取りに時間がかかり、なかなか解決に至らないケースもありました。
自分たちだけでは直せない。
でもクライアントからは早期解決を求められる。
この板挟みは、SAPコンサル特有のつらさのひとつだと感じています。
5. IT戦略など、より上流のキャリアが見えづらくなることがある
これはあくまで私自身がSAP案件を続ける中で感じていることです。
SAPコンサルとして経験を積むと、
- 要件定義
- 業務設計
- SAP導入
- システム設計
- 開発管理
- テスト
- 移行
- 運用
といった経験はかなり積めます。
一方で、「そもそも企業としてどんなIT戦略を取るのか」「どんなシステム構成にするのか」といった、SAP導入よりさらに上流の仕事については、案件によっては経験する機会が限られます。
もちろんSAPコンサルからIT戦略やDXコンサルへキャリアを広げることは可能です。
ただ、何年もSAP案件だけを続けていると、
「SAP導入の専門家としては成長しているけれど、それ以外のキャリアはどうなるんだろう」
と感じることがあります。
SAPを極めたい人にとっては問題ありません。
一方で将来的にIT戦略、DX、新規事業などにも関わりたい人は、一度自分のキャリアを考えてみてもよいと思います。
6. SAP固有のスキルに専門性が寄りすぎる不安がある
SAPコンサルとして働いていると、当然ですがSAPに詳しくなります。
例えば、
- ABAP
- SAP HANA
- SAP Fiori
- SAP Basis
- FI・CO・SD・MMなどのモジュール
- SAP独自の開発・運用方法
などです。
これらはSAP市場では非常に価値のあるスキルです。
一方で私は、
「SAP以外の世界でも通用する技術力はどの程度身についているんだろう」
と不安になることがあります。
例えばエンジニアとして一般的な、
- Python
- Java
- SQL
- 一般的なRDB
- クラウド
- Webアプリケーション
などの知識です。
SAPの中でキャリアを築くのであれば、SAP固有の専門性を深めることは大きな武器になります。
しかし将来的にSAP以外の領域へ行きたい場合、専門性がSAPに寄りすぎることをリスクと感じる人もいるでしょう。
これはSAPの専門性が悪いという話ではありません。
「自分は今後もSAPを軸に働いていきたいのか」
を一度考えておくことが重要だと思っています。
7. AIなど新しい技術領域の経験を積む機会を逃しやすい
もうひとつ最近感じているのが、新しい技術領域との距離です。
生成AIをはじめ、IT業界では新しい技術が次々と登場しています。
一方でSAPの大規模プロジェクトに数年間入っていると、当然ながら仕事の中心はSAPになります。
その間に、
- 生成AI
- AIエージェント
- データ分析
- クラウドネイティブ開発
- 新しいWebサービス
などの領域で実務経験を積んでいる人もいます。
数年間SAP案件をやり切ったあとに周囲を見ると、
「自分はSAPには詳しくなったけど、他の領域ではかなり差がついているのでは?」
と感じることがあります。
特にIT業界は技術の変化が速いため、この不安は今後さらに大きくなるかもしれません。
もちろんSAPでもAI活用は進んでいますし、SAP経験とAIを組み合わせるキャリアも考えられます。
重要なのは、SAPだけを受け身で続けるのではなく、自分が将来どの領域で価値を出したいのかを考えることだと思います。
SAPコンサルを辞めたいと思うのは珍しいことではない
ここまでかなりネガティブな部分を書きましたが、SAPコンサルにはメリットもあります。
専門性が高く、年収も比較的高い。
大企業の基幹システムに関われるため、業務知識や大規模プロジェクトの経験も身につきます。
そのため、
「つらいから今すぐSAPを捨てる」
と考える必要はありません。
むしろ大切なのは、
SAPコンサルを辞めたいのか、それとも今のプロジェクトを辞めたいだけなのか
を切り分けることです。
炎上案件や人間関係が原因であれば、プロジェクトを変えるだけで状況が大きく改善する可能性があります。
一方で、
「SAP以外の技術を経験したい」
「事業会社側で働きたい」
「IT戦略やDXに関わりたい」
と感じているのであれば、キャリアそのものを見直すタイミングかもしれません。
SAPコンサルを続けるか迷っているなら、まずは自分の経験でどんな求人があるのか確認してみるのも一つの方法です。
SAPコンサルを辞めたい人に考えられる転職先
SAPコンサルの経験は、SAP以外でも活かせます。
特に考えやすいのは、以下のような転職先です。
1. 事業会社の社内IT・DX部門
SAP導入で身につけた業務知識やプロジェクト管理経験を活かしやすい転職先です。
コンサル側ではなくユーザー企業側に移ることで、システム導入だけでなくIT企画やDX推進などに関われる可能性もあります。
2. IT・DXコンサル
SAP導入経験をベースに、より幅広いITテーマへキャリアを広げる選択肢です。
SAPだけではなく、
- IT戦略
- DX
- クラウド
- データ活用
- AI
などへ領域を広げられる可能性があります。
3. 他のSAPコンサルティングファーム
「SAP自体は嫌いではないけれど、今の会社や案件がつらい」という人なら、SAPコンサルを続けながら環境を変える選択肢もあります。
SAP経験者は経験年数や担当領域によっては転職市場でも評価されやすいため、年収を維持しながら環境を変えられる可能性があります。
4. SAPユーザー企業
SAPを利用している事業会社へ転職する方法もあります。
導入側ではなく利用側・企画側になることで、これまでとは違う立場からSAPに関われます。
SAP経験をそのまま活かしながら、コンサルとは異なる働き方を目指せるのがメリットです。
SAPコンサルを辞める前に転職市場での価値を確認してみる
SAPコンサルを辞めたいと思っても、いきなり会社を辞める必要はありません。
まずは、
「自分のSAP経験が転職市場でどの程度評価されるのか」
を確認するのがおすすめです。
特にSAPコンサルの場合、
- 担当モジュール
- プロジェクト経験
- 要件定義経験
- リーダー経験
- S/4HANA経験
などによって、紹介される求人や年収が大きく変わります。
転職するかどうかは、そのあと決めても遅くありません。
SAPコンサル向けの転職エージェントについては、以下の記事で詳しくまとめています。
→ SAPコンサルにおすすめの転職エージェント5選|経験者が選び方を解説
まだ転職すると決めていない人でも、「今の経験でどんな会社へ行けるのか」を知るだけでもキャリアを考える材料になります。
まとめ|SAPコンサルを辞めたいなら「何が嫌なのか」を整理しよう
SAPコンサルを辞めたいと思う理由は、人によって違います。
今回紹介したのは以下の7つです。
- 大規模プロジェクトになりやすく、長期間拘束される
- 定期的に炎上プロジェクトを経験するリスクがある
- 本番稼働のたびに強いプレッシャーがかかる
- SAP製品のバグやサポート対応に振り回される
- IT戦略など、より上流のキャリアが見えづらくなることがある
- SAP固有のスキルに専門性が寄りすぎる不安がある
- AIなど新しい技術領域の経験を積む機会を逃しやすい
私自身、SAPコンサルとして働く中で、これらの不安を感じることがあります。
一方でSAP経験そのものには大きな価値があります。
だからこそ、
「SAPが嫌だから全部捨てる」
ではなく、
今まで身につけたSAPの経験を使って、次にどんなキャリアへ進むか
を考えるのが重要だと思っています。
今の仕事がつらいのであれば、まずは自分が何に不満を感じているのかを整理してみてください。
そのうえで、転職市場を見ながら次の選択肢を考えていけばよいと思います。
